経済発展とともに、都市部の住宅需要はぐんぐんと高まっていきました。現在、都市部には新築用地が少なくなったと言われています。そこで再注目されたのが、集合住宅が林立する「団地」。
昭和に建てられたものが多い団地は、いうなれば築古の中古物件。今回は、団地のもつ魅力と可能性にフォーカスして、リノベーション事例を集めてみました。
団地の歴史と魅力
鉄筋コンクリートの集合住宅の林立が特徴的な「団地」は、昭和30年~50年ごろ、経済成長に伴う都市部の住宅不足解消を担う存在として多く建設されました。
広大な敷地を利用して建てられた団地には、郵便局や銀行、商業施設などが内設されていることも多く、敷地内だけでも暮らしのほとんどを賄えるケースもあります。
また、公園や植栽といった環境面が整っているのもメリットのひとつです。
しかし、一方で近年問題視されているのは、昭和に建てられた団地の老朽化と住民の高齢化。
もともとある価値を見直し、さらに時代に合った価値を付加できる団地リノベーションは、この問題への有効な対策として注目されています。
また、一部の団地では、賃貸でも住民独自のリフォームや模様替えを認め、原状回復義務を免除する「DIY住宅」と呼ばれる試みを実施しているところもあるようです。
ここからは、実際に最新の団地リノベーション事例を参考に、どのようなことができるのかを詳しく見ていきましょう。
ライフスタイルと時代に合った間取りへ
昭和時代に建てられた団地の多くは、当時のファミリー層を意識した3LDKが主流。しかし、同じ3LDKでも、現代はLDKの比重を大きくとる傾向があるなど、時代とともに間取りへのニーズにも変化がみられます。
リノベーションならば、住み手のライフスタイルだけでなく、そんな時代のニーズに合わせた部屋数の増減や部屋割りの変更も叶えることができます。
こちらは、昭和50年代に建てられたテラスハウス団地のリノベーション事例。
娘さんご一家から親御さん夫婦へと住み手が変わることで、部屋数の調節と風通しや採光の見直しを目的にリノベーション。
もとは3LDKでしたが、リノベーションにより間仕切りと天井が取り払われ、広々としたワンルームに生まれ変わりました。
団地リノベーションでは、住宅の大枠を変えることはほとんどの場合できません。
そのため、部屋数の増減のような外部に影響を及ぼさない範囲の施工が基本となりますが、こちらの事例は、2階建てテラスハウスであるため、天井を取り払い、より開放的な空間へと導かれているのも特徴です。
壁と天井の一部は、リノベーション前のままあえて残し、住みながら少しずつ手を加えていくのだそう。新品にはない味わい、自分たちで住まいをつくり込んでいく楽しみも、リノベーションは与えてくれます。
制限の中から生まれる工夫と機能美
マンションの形態が多い団地は、リノベーションにあたり「壊せない場所」「変更できない部位」がどうしても生じます。しかし、こうした制限があるからこそ生まれる工夫があるのも事実。
こちらの事例では、LDKの壁の一部に「壊せない壁」がありました。
もとの状態だと、北側の部屋へは採光が十分に行き届きません。そこで、リノベーションにより、室内窓を増設することでその問題を解消。
大きめの室内窓があることで、壁で仕切られた北側の部屋とLDKに「つながり」も生まれています。
室内窓があることで、北側でも、いつも明るい部屋が実現されています。制限を乗り越えることで、付加される新たな機能と価値があるのも、リノベーションならではの醍醐味といえそうです。
設備の刷新と洗練
昭和に建設された団地ですから、建具や水回りの設備も当然、古くなっています。こうしたディティールを刷新するだけでなく、好みのスタイルに洗練することができるのも、リノベーションの魅力。
団地に多くみられる壁付けのI型キッチンは、背面の壁にタイルを採用するだけでも、見た目の印象は変わってきます。
換気扇や水栓、コンロなども新しい設備に取り換えると、大枠は変えずとも雰囲気をガラリと変えることができますよ。
水回りの設備は、特に時代とともにどんどん新しいものが開発・デザインされています。大型集合住宅である団地の場合は、そもそも量産型で機能重視の設備状態ですから、水回りの設備替えはやり甲斐がありそうですね。
設備だけでなく、収納についても住み手の使いやすさや、家族構成に合ったスタイルに変えておくと、見た目だけでなく機能面も洗練していくことができます。
団地とは思えないホテルライクな雰囲気の浴室です。場合によっては、バスタブのサイズを変えられないこともありますが、壁や照明、水栓を変えて好みのテイストに仕上げることができます。
好みの世界観にまとめやすい空間へ
リノベーションでは、空間割りや壁・天井・床の仕様、ディティールを変えることで、より好みの家具やアイテムが映える空間をつくり出すことができ、団地は一般の中古マンションよりも、比較的予算を抑えて購入することができます。
つまり、団地リノベーションなら、新築や注文住宅よりも、空間づくりにより多くの予算を割り当てられるのです。
こちらは、奥様のラグジュアリーなインテリアの世界観に、空間の素材やディティールを合わせてリノベーションをした事例です。
家具の素材や色と、壁や床がリンクしているため、まとまりのある完成度の高いスタイリングに。
玄関も、ソファが置けるゆったりサイズ。よりエレガントな雰囲気を醸し出すR壁もいい仕事をしていますよね。
もしかすると、ヨーロッパ風のクラシカルでエレガントな雰囲気のインテリアは、ピカピカの新築よりも、歴史を重ねた味わいのある築古団地のなかで真価を発揮するのかもしれません。
ずっとあたためていた妄想デザインが現実に
以前住んでいた新築マンション、文句はひとつもないけど決められすぎていて合わなかったそう。
イメージしていた無骨な雰囲気を出すために、配管あらわしや躯体天井に間仕切りを造作して既成収納を造り付けのように納めるなど、その時その時の現場対応での悪戦苦闘の工夫があります。
LDKの真ん中にある、WICの壁面は子供がうれしい黒板塗装。
おおらかな団地リノベで子供部屋を子供が壁塗りをしたり、和やかな打ち合わせで、安心して楽しく家づくりができたとのことです。
築54年、いくつもの問題をクリアしながら生まれ変わった住まい
1964年、東京オリンピックの年に建てられた団地をフルリノベーション。
お風呂が換気設備のない旧来のものであったり、天井梁が床から180センチのところまで下がっていたりと、困難を極めた設備の更新や圧迫感をなくす、専門家ならではの力業が満載。
実用性だけでなく夢があふれるリノベーションで、日常が豊かに。
左が壁梁、ブルーの壁や内窓で閉鎖感を感じさせない工夫を。奥には洗濯コーナーとウォークインクローゼットです。
シンプルを追求して居心地よく
築48年の鎌倉にある団地のリノベーション。
3方向それぞれに視界が開けて緑を間近に感じることができる環境の中、ダイニングキッチン・子供部屋・寝室ともに窓から緑が眩しく、光と風が通る明るく開放的な空間に。
各部屋の窓には、既存サッシの手前に襖のような内窓を作ることで、以前の団地イメージを払拭!洗練されたインテリアです。
I型キッチンは、オリジナルデザイン。素材を他の部屋の収納と合わせました。家具のように美しいキッチンは、実用性も細かい収まりにも気づかいがあります。
SOHOとしても!団地リノベーション
昭和40年代に建てられた団地を、デザインオフィスのあるSOHO に。
部屋の大きさにメリハリをつけて、小上がり畳など段差を工夫することで風通しの良い開放的な空間に。
ワークスペースには、レイアウトが自由に変えることができるキャスター付きの大きなワークデスクも2台造りました。
引き戸を積極的に採用。開け放したり、閉めたりすることで、部屋が開放的になったり、集中して仕事ができる環境になったりと、フレキシブルな部屋使いが可能に。
作り込まない、団地の良さを活かして
築50年以上、団地のリノベーション。
細かく部屋が分かれていましたが、3DKを1LDKの広々空間へ。下がり壁や、室内窓のあるベッドルームがあることで、自然とLDKのコーナーが分かれています。
シンプルに色のトーンを合わせることで、洗練されたすっきりとした印象に。視線が気にならない階なら、自慢のインテリアにカーテンも必要なしです。
団地リノベーションは共有部分に注意
最後に、団地リノベーションでは、「共有部分」に注意をする必要があります。
例えば、玄関ドアのように外部とつながる部位は共有部分とされ、購入物件でも個人で変更ができない場合があります。どうしても変更したいという際は、団地の管理組合と相談してみましょう。
団地には環境面や設備面の魅力がありますが、一方で、老朽化や耐震性能などの問題も抱えています。
リノベーションなら、団地にある古き良き価値を見直しながら、時代とライフスタイルに合った新しい価値を加え、住宅としての価値を向上させることが、今回紹介した事例からもおわかりただけたのではないでしょうか。
ぜひ、住まいづくり・住まい探しの際、「団地」という選択肢も検討材料に入れてみてください。
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