「造作(ぞうさく)家具」という言葉は、家づくりを検討して初めて耳にするかもしれません。「造り付けの家具」と呼ぶこともあります。
例えばACTUSやIKEA、無印良品のような店舗で購入するものとは違って、その家に合わせてオーダーメイドで作る家具のこと。この造作家具の力はとても偉大なのです。
造作家具の利点(1)余剰スペースを活用できる
今回取り上げる事例は、夫婦で暮らす都内のマンションリノベーション。
もともとの躯体(建物自体の壁)が角度のついた特徴的な平面形状であることを利用し、眺めのよいバルコニーに向けて視線が抜けるレイアウトに変更しています。
「AFTER」の黄色い丸は、写真を見ていてわかりやすい造作家具の部分。まず角度をつけているがゆえの余剰空間が、室内のちょうど中心付近にあります。そこに小さな本棚を造作家具で。
単体で見ると収納力は大きくありませんが、家全体にこうした収納が少しずつ散らばっていると便利です。これは片付けやすい部屋の秘訣でもあります。
さらなるメリットは、平面プランに合わせて設計しているので家具が部屋に出っ張らないこと。
余剰空間を造作家具に充てることによって、部屋に凹凸が出ることなく広く快適に使えます。面積が限られた都心の住宅には特におすすめしたいポイントです。
また、マンションでは多くの場合、柱型や梁型が室内に出てしまいます。そんな時にこのトイレのように柱型を利用してちょっとした収納を作ると、飾り棚としても使えます。
「ないと困る」というほどの収納ではありませんが、きちんと用意された場所に飾るものを選ぶというのは楽しいもの。部屋に奥行きを生んでくれる効果もあります。
造作家具の利点(2)ぴったりのサイズで作れる
この事例ではキッチン全体が造作家具で作られています。オーダーメイドだから自分の料理スタイルに合わせられる……という使い勝手の良さはもちろんのこと、この冷蔵庫脇収納のように、ウォーターサーバーや炊飯器がすっぽり収まるスペースがあると気持ちがいい。
奥に見えるパントリーの棚は既製品のカゴに合わせているため、すっきりと無駄のない収納ができています。
(よく見てみると、下の格子の奥は猫トイレスペース。猫を飼っている方ならこの快適さがきっとおわかりいただけるはず!)
パントリーから続くアトリエ。机とその脇にあるキャビネットは既製品のようですが、上部に可動の棚を造作しています。壁につける収納は既製品ではなかなか難しいですよね。
この事例の良いところは、パントリーやアトリエはどちらかというと「裏」として扱い、簡単な可動棚のみにしているところ。
一方で、玄関やリビングやオープンキッチンは「表」としてしっかり仕上げ、コストコントロールもされているように見受けられます。
全ての家具を作り込むと費用がどんどん上がってしまうので、表と裏のメリハリを考えることも大切です。
造作家具の利点(3)トーンをまとめ上げる
これまで見てきた写真でもわかるように、この家全体のトーンは白/やや濃い木の色/淡いグレーで統一されています。
先ほど説明した「表」にあたる玄関の収納。こちらの収納は扉をしっかりつけて、内部が見えないように。温かみのある木目と色がこの家の第一印象として良い役割を果たしています。
オープンキッチンは、木に加えて大谷石とモルタル、そしてステンレスを組み合わせて少し硬派に、重量感を出して仕上げています。システムキッチンではなく造作キッチンだからこその自由な素材使いといえます。
家全体を見渡してみてもトーンが整った印象。素材を限定し、造作家具を多く設えているためでしょう。
家具は後からなんとでもなるし……と思わずに、ぜひ造作家具を設計段階から検討してみてください。余剰スペースを活用でき、ぴったりの寸法で作れて、トーンも統一できる。オーダーメイドなのでそれなりに費用がかかる場合もありますが、既製品の家具をポンと置くのとは全く違う威力が造作家具にはあります。
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